話の広場
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月刊誌「致知」5月号から「歴史の教訓」を転載

【中国を原子力産業の覇権国にしてはならない】上智大学名誉教授・渡辺昇一氏の投稿から】

新幹線で『Wedge』を読んでいたら、カルフォニア大学バークレイ校教授のリチャード・ムラー氏の「先進国世論のアレルギーで「中国の原子力産業が覇権を握る」と題した記事が眼に飛び込んできた。ムラー氏は、今世紀末にかけて世界の人口が100億人達することを考えると、重要なエネルギー原はやはり原子力です」と発言したうえで、人口が激増するアフリカ、アジア、南米で原子力が普及することを予測「その時、発電所を提供するのは誰でしょうか?世論の激しい反対のために技術力を維持できない日・米・独に代わり、中国が大きく台頭するでしょう」と結論つけていました。

ここに記載された内容は私(渡辺昇一氏)が懸念し、警鐘を鳴らしてきたそのままの真実に他なりません。ムラー氏が指摘するように、先進国は皆、原発アレルギーを抱えています。日本はもとより、ドイツ、イタリア、アメリカも。そうなると原子力アレルギーのない国がものすごく得をするということになります。その筆頭は中国です。追突事故を起こした高速鉄道を”鉄屑”だと言って地中に埋めてしまうくらい科学技術は未熟です。そんな不完全な技術でも国家が強力に牽引し、無理やりにでも形にしてしまうところに国の恐ろしさがあります。その間に先進国がもたもたしていたら、彼我の技術力は逆転してしまうのは明らかです。

日本は原子力に関して世界一安全で高技術を誇る国であることを忘れてはいけません。想定外の津波被害は別として、東日本大震災の激震での破損はゼロでした。安全性はその後の研究で一層高まっています。放射線の被害を受けた人はまだ一人も知られていません(被害者は強制立ち退きなどのストレスが原因と言われています)。いま世界中の国にとって日本の高度な原発と技術者たちの腕は垂涎(スイゼン)の的です。韓国や中国に引き抜かれないようにしなければなりません。国内の原発が停止する中、それを虎視眈々と狙う隣国がある!という事実を受け止め、再稼働を急がなくてはいけないのです。(月刊志「致知」より転載)

 |Posted 2015.5.13|