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ひつまぶし起源は「器保護」


少々値段は張るものの、たまの贅沢や観光の思い出にぴたりなのが名古屋の名物料理の中でも特別な存在といえる「ひつまぶし」。うな丼や、うな重とひと味違う、中部圏独特のうなぎの楽しみ方だ。しゃもじで十字に4分割し、薬味とだしで味の変化を堪能するのがプロのおすすめ。明治6年(1983年)創業の「あつた蓬莱軒本店」(名古屋市熱田区)。残暑の厳しい9月中旬、扇風機と大うちわで備長炭を真っ赤に燃やし、職人がタレにくぐらせたうなぎを焼いていた。

うなぎは包丁で細かく刻み、器に盛った白飯の上に。湯気をふたで閉じ込めれば、名物の「ひつまぶし」ができあがる。誕生の経緯には諸説ある。発祥店とされる蓬莱軒本店の5代目女将、鈴木詔子さんは「明治時代の中ごろに原型が生まれた」と話す。当時は商人や芸妓さんたちの出前が多かったが、丼が瀬戸物のため回収時に器同士がぶつかってよく割れた。そこで、いまの「器」になった。

食べ方のおすすめは、しゃもじで十字に切り込みを入れて4回に分けて茶碗に盛る食べ方。一杯目はそのまま、二杯目は、ワサビやネギなどの薬味でさっぱりと、三杯目はカツオの効いただしをかけてお茶漬けにする。最後の四杯目は、お気に入りの食べ方でどうぞ」と女将が語る。だしをかける食べ方は「お酒のシメに」という客の提案がきっかけで始めたそうだ。2019年5月に発行された「ミシュランガイド愛知・三重特別版」には、「あつた蓬莱軒」のほか「いば昇」「うな富士」など21店舗が掲載された。(2019.10.25日経新聞)

 |Posted 2019.11.1|