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最強の柔道家は人間力から(ブログの管理者⇒すべてに言えると考える)


金メダル一号となった高藤直寿や阿一二三(ともにパーク24)が座礼して畳を降り、大野奨平、永瀬貴規(ともに旭化成)は白い歯をこぼすことなくライバルと健闘をたたえあった。「礼に始まり礼に終わる」。東京五輪で日本の柔道家たちの抑制の利いた振る舞いもまた、見る者の心に刻まれた。「ただ強いだけでいいわけではないと言い続けてきた」全日本柔道連盟(全柔連)強化副委員長を務めた山田利彦が言う。

今大会、柔道日本代表の特色の特色の一つが、人間力や教養の育成にも少なからず時間を割いたことだ。合宿中に時折組込んだ書道や陶芸、茶道の体験。遠まわりに見える時間にも、男子監督の井上康生監督には外の世界に目を開かせ、興味をも持って取り組むことで自主性を育む狙いがあった。かったてない緊張感と期待に包まれる自国開催の五輪。「最後に腹をくくって戦うことは、人間として自立しないとできない」。言われるがままのお仕着せでは極限を乗り越えるには限界があるとみていあた。


著名なアスリートによる講演などにも選手を連れ出し、芯が弱いとみた選手には海外への単身者修行を勧めた。口下手な永瀬ににコーチの金丸雄介は「本を読め」と論した。「(考えを)を言語化できないことは、抱えている問題を解決できないことにもつながる」。抜きんでた技にしなやかな心を加えた柔道家たちは、五輪にすむといわれる魔物も何するものぞと、堂々とした戦いを見せた。

日本オリンピック委員会(JOC)も掲げる「人間力なくして競技力向上なし」の範をを示すような育成を実現した柔道界。しかし、足元を見ると。裾野では地盤沈下が迫っている。全柔連への登録者数は2006年から15年連続で減少。2019年で14万人超と直近ピークの2005年から3割減り、中学生は4割減った。1964年東京大会五輪競技に採用されて以降、柔道は国民的行事での成果をあびることで、競技人口を拡大してきた。

しかし、娯楽や習い事が多様化するなか、五輪が万能だった時代は過去のものに。打ち込みなどの反復練習も多い厳しい稽古や、しきたりや伝統の重視といった柔道の特徴は美徳でもある反面、現代っ子にはハードルが高いのか。リオデジャネイロ五輪で成績がV字回復後も、減少に歯止めがかからない。=日経・西堀卓史2021.10.29の原稿から転載)

 |Posted 2021.11.3|