台湾民主化の父・李 登記総統の秘書・早川友久
新年あけましておめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。
11月20日(土)に台中市の国立中興大学で「台日安全保障シンポジウム」に登壇させていただきました。
発表時間は10分程度でしたが、私がお話した内容は下記の通りです。「1999年9月に台湾中部で発生した『921大震災』のとき、世界中で一番最初に救援隊を派遣したのが日本だった。当時、日本の救援隊は最新鋭の機器を駆使して行方不明者を探す一方、遺体で発見された際には『助けられなくて申し訳ない』と遺族に謝罪したという。これらのエピソードは今でも語り草になっている。
私は2007年から台湾に住んでいるが、私が日本人だと分かると『あのとき一番最初に台湾に助けに来てくれたのが日本だった、ありがとう』と言われたことは一度や二度ではない。
今年5月、台湾はコロナの市中感染が急拡大したが、台湾社会に衝撃を与えたのがワクチンの在庫不足だった。急遽購入しようとしても、蔡英文総統が「中国の妨害により契約できてない」と明言したように、ワクチン調達は難しいと思われた。『これからどうなるのか』というのが、台湾在住の日本人も含め、台湾社会の正直な気持ちだっただろう。あの当時の暗い雰囲気は私自身もよく覚えている。
6月3日の夜、突如『日本からのワクチンは明日午後、台湾に到着』とのニュース速報が流れた。翌日、ワクチンを載せた日航機が台湾桃園国際空港に着陸する光景はすべてのニュースチャンネルが生中継していたし、私自身も見ていた。あの日の夜、台北101ビルや有名ホテルが「ありがとう日本」とライトアップして日本への感謝を表明し、SNS上は「謝謝日本!」のコメントであふれた。まさに日台関係が大きく前進する一歩を目撃したと感じているが、これもやはり世界中で一番最初に台湾にワクチンを送ったことに意義がある。
10月に行われた財団法人台湾民意基金会の世論調査で「台湾がもし中国による武力侵攻を受けたら、日本は介入すると思うか」という設問に対し、58パーセントが「思う」と答えた。この数字について、私は「けっこう高いな」と感じた。というのも、李登輝総統が日本に大きく期待する一方で、「日本はもっと強くならなければならない」と常に叱咤していたように、日本がときに中国の顔色を伺うばかり、台湾に冷淡な態度を取ることが多々あったし、そう感じている台湾の人たちも少なくないからだ。
実際、2018年に交流協会台北事務所が台湾で行った世論調査で、日本は「好きな国はどこか」などの設問で1位になったものの「台湾に影響力のある国はどこか」という設問については、1位が中国、2位がアメリカで、日本は3位だった。良くも悪くも台湾に影響力があるのは中国であり、米国なのは間違いない事実だ。
だからこそ、10月の世論調査で58パーセントの台湾人が「台湾がもし中国による武力侵攻を受けたら、日本は介入すると思う」と答えたことが予想外に高いと感じられた。その理由として、私個人の考えだが、今年6月に日本が世界で最初に台湾へワクチン寄贈したことが背景にあるのではないだろうか。日本が中国のことを気にせず、台湾へ寄贈したことで、日本に対する信頼や期待が高まったといえるのではないか。
そう考えると、冒頭紹介した921大震災のエピソードのように、今年ワクチンを寄贈したことは、これから10年後、20年後、30年後の日台関係にとって大きな財産になるだろう。外交においては2番とか3番では意味がなく、やはり1番でこそ意味があるわけで、文字通り「2番じゃダメなんです」と言えるのではないだろうか」
ご一緒させていただいた、産経新聞の矢板明夫支局長、中央通訊社の張瑞昌社長をはじめ、関係者の皆さま、ありがとうございました。
|Posted 2022.2.3|