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大阪「正論懇話会」岩田清文氏の講演(台湾日本有事の備え)

習近平国家主席は長期独裁化で毛沢東を超える英雄になろうとしており、台湾統一のためには武力行使も辞さない。一方、台湾では兵役義務を延長し、防衛力を整備。米国では侵攻時期が早まって2025年になるのではないかという見方もある。政府は昨年12月、「国家安全保障戦略」など3つの戦略文書を作った。これまで厳しい見方を避けてきた中国を事実上「脅威」としたことは歴史的。経済なども含めた総合的な国力による安全保障体制の強化や、日米同盟のさらなる強化が必要だ。

中国はアヘン戦争以来、半植民地化された「屈辱の100年」を乗り越え、覇権を持とうとしている。今や海軍は米国をも抜く世界最多の軍艦を保有している。西太平洋における2025年時点の戦力予測では、中国は近代的な戦闘機だけでも米国の7・8倍だ。米国は中東などに戦力を持っているが、たとえ持ってきても1カ月以上かかる。この間に習主席は台湾を乗っ取ろうという計画だ。

習主席は最初から軍事力は使わないだろう。情報を遮断した上で台湾の周りで大演習を繰り返して台湾人を混乱させ、政治工作を行って総統の首をすげかえようとする。しかし台湾の方々は帰属意識が強いので、最後は軍事侵攻しかない。小競り合いになると、最悪の場合、沖縄県の与那国島、石垣島、宮古島の上空は戦闘地域になる。政府は島民らを避難させる一方、島々を守るため自衛隊を展開させる。米軍も一部を日本に展開し、中国が侵攻するなら戦う意志を見せつけて抑止する。

それでも習主席が「過信」と「誤算」で侵攻を決意すれば軍事侵攻が始まる。習主席は日本の米国支援を妨害し、米軍の展開を遅らせれば台湾侵攻は成功するとみている。非軍事的には交通機関や政経中枢の破壊工作、サイバー攻撃をした上で、フェイクニュースを流して日本全体をパニックにする。その上で在中日本人らを利用した人質外交などを行い、核による恫喝(どうかつ)を行う。そして最終的には軍事力の行使を始める。日本の自衛隊基地のみならず、社会インフラすべてに攻撃を仕掛けてくるだろう。

そうさせないためにも、相手からさらなる武力攻撃を防ぐための「反撃能力の保有」や、短期決戦を目指す中国に対するため、平時から抑止体制を強化する「即応力」、地下シェルターを建設する「抗堪(たん)力」などが必要だ。一番大切なのは国民の戦う意識である。意識調査の結果、「もし戦争が起こったら、国のために戦いますか?」という問いに対し、日本は「はい」が13・2%で世界最低だった。自分の国は自分で守ろうという国民でないと、同盟国の米国だって助けには来ない。

戦争は軍事のみの戦いではない。銃を持って戦うのは自衛隊だが、全省庁と地方自治体、公共機関すべてが、それぞれの持ち場で「闘う」。この「闘う」という姿勢が大切なのだ。戦争は過信と誤算によって起こる。

 |Posted 2023.9.15|