産経抄から(北朝鮮)2023.06.03
元大本営陸軍部参謀で伊藤忠商事会長などを歴任した瀬島龍三さんは昭和10~11年頃、満州国(現中国東北部)東部の白頭山系の密林地帯で匪賊(ひぞく)討伐作戦に就いていた。このとき、後に北朝鮮の国家主席となる金日成(キム・イルソン)の部隊から銃撃を受け、九死に一生を得たこともある。
もっとも当時、金日成の部隊を名乗る匪賊は複数あり、本物だったかどうかは分からない。ともあれ白頭山は朝鮮民族にとって特別な霊山であり、世襲3代の金王朝も「白頭山の血統」を強調し、一族の神格化に努めている。その神通力も限界に近づいたのか。拉致被害者「救う会」の西岡力会長によると、「北朝鮮社会の崩壊が始まった」という。すでに例年の3倍の餓死者が出ているほか、4月に入り北朝鮮の政治警察である国家保衛省から報告された反体制事件は1千件に及ぶ。警察官、朝鮮労働党幹部らが襲われる事件も頻発している。
金正恩(ジョンウン)朝鮮労働党総書記の妹、金与正(ヨジョン)氏は4月、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の訪米を受けた談話で「(バイデン米大統領が)『政権の終焉(しゅうえん)』という表現を公然と直接使った」と非難した。これを北朝鮮のテレビが放映すると、多数の人民から「政権を倒してくれるならありがたい」「早く攻撃してほしい」との声が上がった。
2日の小紙朝刊は、減量していたはずの金総書記の体重が、ストレスによる反動で140キロ台半ばに増えたとの韓国の情報機関、国家情報院の分析を報じている。金総書記が連れて歩く丸々とした娘を含め、飢餓状態にある人民の目にはどう映るか。
平成14年9月の小泉純一郎首相による初訪朝時もそうだが、北朝鮮は困り果てると日本に目を向ける。岸田文雄首相は拉致問題進展のチャンスをつかんでほしい。
個別ページへ |Posted 2023.6.9|